真田将太朗
作者の紹介
真田将太朗さんは、東京藝術大学美術学部芸術学科に在学中の 2 年生。
大学で美術史や美術理論、実技を学びながら、制作活動を行っています。
思わず目を奪われるような作品を描く真田さんについてインタビューをして参りました。
──「流浪」について
キャンバスにアクリル、45.5×53cm、2021
彷徨うけれど身体は熱く、
躊躇うけれど時代は動く。
──「complex of 2020」 について
キャンバスにアクリル、10×14.5cm、2020
complex of 2020 シリーズ 4 作品のうちの 1 つ
私にとって 2020 年は複雑だった。
新しい環境、周囲の評価、満たされぬ思いが渦を巻き、心に纏わりついてきた。
閉塞感を感じながらも必死に抗い、大きく飛び出すときを望む日々を、小さな画面に描いた。
──芸術に興味を持ったきっかけはありますか
明確にここで芸術にハマったというきっかけは思いつかないですね。
ですが、物心ついたころから、とにかく絵を描くことが好きでした。
近所のおじいさんに油絵を習ったり、図鑑を開いては模写をしたりして楽しんでいました。
──では、東京藝術大学に入ろうと思ったのはいつ頃からでしょうか
中学や高校では、美大に入るという目的はなく、普通に勉強や部活をしていました。
総合大学で日本の文化史を学ぶことを考えていたのですが、
やはりプレイヤーとして制作活動をしたいという気持ちもあり、高校 3 年生のときに藝大の受験を決めました。
現在は東京藝術大学で美術史と実技の両方を学んでいます。
──理論も実技も学んでいるということですが、作品の制作について教えてください
主に油画やアクリル画の平面作品を制作しています。
それに関して周りからよく言われるのは、「制作がとても速い」ということですね。
complex of 2020 では、実制作にかけた時間が 30 分程度でした。
一方で、前段階となる構想部分では⻑い時間しっかりと考えています。
まずはテーマを設定し、そのテーマにまつわる自分の中の概念や知識を、ひたすら文章にして書き起こします。
一つの絵画の構成を考えるのに数か月かかることもあります。
──制作時間が短いのは、頭の中に完成された絵を瞬時に描いているからなんですね
そうですね。
以前、テーマに沿って考えながら、ゆっくりと制作してみたことがあるのですが、描いているうちに迷ってしまい、結果として描きたいものを描けずに絵が破綻してしまいました。
それからは、頭の中で構成したものを、なるべく正確に、瞬間的に描きだすことを心がけています。
──作品制作で意識していることはありますか
作品が与えるインパクトは意識しています。衝撃を与えるような色彩と構図で鑑賞者の目を引くようにしています。
例えば、complex of 2020 の初作もその一つです。
色彩や構図以外にも、飾られる場所に合わせた額縁を選ぶなど、小さな作品が最大限与えるインパクトを計算して展示しました。
──抽象画を中心に制作を行う理由はなんでしょうか
明確なものを描いたところで、作品からどのような印象を受けるかは鑑賞者にゆだねられる。
であれば、自分の中の概念をとことん抽象的に描いて、初めて見る人がどのようなイメージを持つのかに興味を向けたい。
多様な色彩と描線は、画面内の要素の多さで見る人によって連想するものに差を生み出します。
自分はテーマを設定して制作していますが、それが鑑賞者に 100%伝わるなんて思っていません。
好きなものを好きなように描いているので、鑑賞者にも好きに鑑賞してほしいと思っています。
──今後の活動について教えてください
大学 2 年なので考えが変わることもあると思いますが、
作品制作を続けてクリエイターになりたいと思っています。
言葉という媒体も好きなので、大学の教員や本の執筆など、作品制作の傍ら、「伝える」こともしていきたいですね。
どんな形であっても、一生表現の世界に関わるつもりです。
略歴
2000 年 兵庫県⻄宮市生まれ
2019 年 辰馬育英会 甲陽学院高等学校 卒業
2020 年 東京藝術大学 美術学部 芸術学科 入学
2021年 藝祭2021実行委員長
2022年 個展「from」開催
受賞歴
2021年 第15回藝大アートプラザ大賞 入選
2022年 第16回藝大アートプラザ大賞 アートプラザ賞
東京藝大アートフェス2022 選出
出展歴
2020年 geidai collection 第 0 回
2021年 第15回藝大アートプラザ大賞展 東京藝術大学
2022年 第16回藝大アートプラザ大賞展 東京藝術大学
個展「from」谷中ギャラリーhaco